コラム

Column

経営者は交代した方が利益率は高くなる?廃業予定企業の40.9%は現状維持以上が可能

2018.08.03

コラム

<料理自慢の広告代理店社員が小料理屋を開業>

大手企業に勤め、自分の部署だけで、数億~数千億を動かしていた管理職の方でも、いざ中小企業で自ら経営するとなると不安に思うこともあるでしょう。むしろ不安にならない人の方が、先行きが不安です。大企業の看板で簡単に億単位を稼いでいた人が、資金も看板もない中小企業で、1円を稼ぐ大変さは経験しないと分からないものです。

某広告代理店に務めていたAさんは、バリバリの仕事人。時折、部下や友人を自宅に招いて、自慢の手料理を振る舞う。参加者からは、「お店みたい!」「いつでも店を出せますね」と大評判。お世辞と分かっていても悪い気はしない。55歳で役職定年を機に、早期退職で繁華街の一等地に小料理屋を開業。かつての取引先や部下が常連になると、一般の方の予約が取りづらくなるだろうななどと心配しつつ。

結果はご想像の通り。開業当初は部下や取引先が訪ねてくれたものの、ひと月もすれば誰もいないのが当たり前の状態に。自分で選曲したジャズが悲しく響く店内で、簡単に数億円を動かしていた代理店時代を懐かしむ…。

「0から1」をつくる起業と、1を5や10に伸ばしていくのは根本的に違う。大企業で安定した売上を着実に伸ばしていくことに慣れた企業人には、ゼロから始める起業ではなく、既に事業がうまく回っている会社を買収するのがオススメです。

<経営者は交代した方が儲かる?>

社長交代

とはいえ、何十年も先代オーナーが経営してきた中小企業を引き継ぐのは大変なのではないか。自分が経営して利益が出なかったらどうするのか、という不安もあることでしょう。

実は、経営者の交代があった中小企業において、交代のなかった中小企業よりも経常利益率が高いという調査結果があります(出所:中小企業庁「事業承継ガイドライン」)

グラフは、2007年度時点で55歳~64歳の経営者について、2007年度から2008年度にかけて経営者の交代の有無により、経常利益率を比較したものです。

なぜ、経営者が交代した方が利益率が上昇するのでしょうか。

日本政策金融公庫総合研究所の調査によると、廃業予定企業であっても、今後10年間の事業将来性について、5.5%が「成長が期待できる」とし、35.4%が「成長は期待できないが、現状維持は可能」と回答しています。

中小企業退職金

約4割の経営者が少なくとも現状維持は可能と回答しており、廃業予定企業が必ずしも将来性がないと考えているわけではないのです。

しかし廃業を考えていると、成長の可能性があると分かっていても、新規開拓や投資には二の足を踏んでしまい、利益率が低迷します。そこで、新たな経営者に世代交代することで前向きな投資ができ、本来の企業成長につながるのです。